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余白の風 求道俳句とエッセイ 85号 2003/6/1 発行者:平田栄一 求道俳句評 余白 『南無の心に生きる』(筑摩書房)あとがき(『余白の風』第八一号掲載句)より アッバ讃句 井上洋治 朝 目覚め 命なりけり南無アッバ 皿洗い茶碗こわして南無アッバ 烏鳴く洗濯びより南無アッバ 電車待つホームに立って南無アッバ 自己嫌悪そっとさしだし南無アッバ 夜半に目覚め心痛んで南無アッバ 診察室ドアをくぐって南無アッバ 秋深し 風がとなえる南無アッバ 井上氏はわたしが洗礼を受けたカトリック司祭(神父)です。昨年、井上神父から次のような私信を頂きました。「秋らしくなりました。「余白の風」(小誌)有り難うございました。趣のある、いい句がのっていますね。イエスの福音の文化内開花のうえにも、「余白の風」がよい働きをしておられることに感心し、また同時にご発展を祈ります。小生、俳句なるものは、実に芭蕉にはじまって芭蕉に終わるものと思っていたので、全くつくったことも、ならおうと思ったこともなかったのですが、「南無アッバ」の世界に漂流してきたら、何となく、それらしきもので、南無アッバに生きることを表してみたくもなりました。・・・・」(〇二年一〇月) 神父は終戦直後、大学を卒業してすぐカルメル会という厳しい修道会で学ぶべく、フランスへ向かいます。その船の四等船室でたまたま旅を共にしたのが、公費留学生の遠藤周作氏でした。氏のエッセーに、夜の更けた甲板でひとり跪いて祈る井上青年の姿が描かれています。井上神父と遠藤氏は、宗教者と文学者という立場の違いこそあれ、期せずして同じ問題意識、日本人とキリスト教≠ニいう大テーマを抱えて帰国することになります。爾来神父は、キリスト教のインカルチュレーション(日本文化内開花)のために尽力し、多くの求道者を導いてきました。文学にも造詣が深く、とくに芭蕉や良寛、西行や宮沢賢治に言及した著作もあります。 掲句中の「アッバ」とは、イエスが日常話していたアラマイ語で、父親を親しみを込めて呼ぶ幼児語であり、日本語では、「お父ちゃん」とか「パパ」にあたる言葉です。イエスの祈りはすべて「アッバ」で始まっていたともいわれます。神に対してユダヤ教が持っていた厳父の父性的神観から、「アッバ」と呼べる慈父の母性的神観への転換、それこそイエスが十字架の死をも覚悟して宣べ伝えた福音だったのです。 二十代半ばに遠藤文学から井上神学を知り、その地点から俳句によって求道し始めたわたしにとって、「アッバ讃句」を既成の俳論の範疇で批評することは、見当違いのように思います。井上神父は芭蕉他から学びつつ、西欧からの借り物でない日本人の求道性(スピリチュアリティ)に根ざしたキリスト教を模索し続けてきました。その果てに、イエスとともに「アッバ」と叫んですべてを委ねるという思いに到達したのです。「アッバ讃句」はその境地を端的に表現したものといってよいでしょう。 (『紫』8月号掲載予定原稿) l
今月の投稿作品も心なごみますよ! ゆっくり味わってくださーい。 美しい季節の中にいると 緑の風 花々に愛されていることを感じる 陽ざしに愛されていることを感じる 風に愛されていることを感じる それらを創りたもうた 神に愛されていることを 私は感じる Re: ありがとうございます 余白 ちょうど今、85号を編集していたところです。爽やかで、温かい詩をいつもありがとう! ---------------------------------------------------- 教会のある風景 その12 四月 島 一木 星ひかり地に花ひらく受難節 病院に子供あふれる受難節 計らずも弥撒にあずかる天草忌 十字墓虻のきらめき忙しなく 朝食はパンとコーヒー聖木曜 聖金曜ミサに遅れる「わたしである」 部屋に居て読書に励む聖土曜 木蓮の咲く角曲がり教会へ 復活や柱の陰にひざまずく 御手によりすべては変わる木々芽吹く ---------------------------------------------------- 信仰と自然 その1 島 一木 主よどこへ 茨の花に消える影 天国には幼な児が先天の川 ゆるせ七の七十倍 いや鯰です パンのみに生くるにあらず呼子鳥 迷っている小羊はどこ春の雲 見ても見ず聞いても聞かず蟇 針穴を覗く駱駝か黄砂降る ほら狼はそこにいるあそこにいる 友よ退けあなたの思いは錦鯉 立ちあがって海へ飛び込む夏の山 ---------------------------------------------------- 福音短歌 その7 島 一木 天に宝を積みなさい 宝のある所に あなたの 心もある (マタイ6:20) 思い煩うな 生命は 食べ物にまさり 身体は 着る物にまさる (マタイ6:25) 求めなさい 与えられるだろう 捜しなさい 見つけるだろう 叩きなさい 開かれるだろう (マタイ7:7) 滅びへの門は 大きく 滅びへの道は 広く そこから入る者は多い (マタイ7:13) 生命への門は 狭く そこへの道は 細く 見つける者は 少ない (マタイ7:14) ---------------------------------------------------- (無題) まいまい 耳塞ぎ,読んでまぎらす,神父の声――退屈なお話に Re:余白 ハッハッハ。僕はね、そういうときっていうか実はいつも、神父様の顔みてうなずきながら、思いついた発想=句やエッセイの種みたいなのをメモってんのでーす。これなら、話している神父様も、「お、俺の話をメモとりながら熱心に聞いてくれてるな」と思えるし、僕も充実です。。。これってよく僕の「倫理」の授業聞きながら、英語とか内職している生徒とは、ちょっとちがうと思うんだけど。。。あくまで神父様の顔と話からの「発想」だもんねー。。ププ Re:まいまい 4月一杯でプラトンまで,大丈夫ですか〜 他人事だけどちょと心配 Re:余白 うん、強引にストア・エピクロスまで進みましたー<授業。週五日制2学期制65分授業になったもんで、生徒も教師もきつーいですーー ---------------------------------------------------- 美しい五月によせて 緑の風 ほほえみは 花にとけたアンジェラス Re: 余白 うっとりするような、五月の風を感じますー。 ---------------------------------------------------- (無題) 比田井 白雲子 風になってこられた ちょうちょうヒラヒラわたしニコニコ ごめん いわしがうまい 求道俳句評いつも楽しみにしています。内容もあり味もあり、読んでは心の糧としています。 ---------------------------------------------------- 「頼むもの」
奈菜 ことばによって 私は 純粋性をとりもどす ことばという 透明な 頑丈な杖を ついて 歩く ***濁った自分を見つめる日々です。それだからこそ、ときどきどこからか浮かんでくる自分の中のほんとうの言葉が大切に思えます。 Re:余白 はい、ロゴス=言葉、宇宙の根本・・・・ダルマ・・・・ そういうものに触れたとき、はっと気がつくのでしょうねー。 ---------------------------------------------------- (無題)
なん 神先に戸をたたいて居まし給ふ *ヨハネの黙示録3章20節を読んで少し感動しました。実は、神の方が人が求める(マタイ7章)よりも先に訪ねて下さってあるのかなぁと思ったんです。 御言と祈りによりて自己牧会 Re: われ先に 警備のおじ おしさしぶりですね、なんさん。お元気ですか? いい句を詠んでおられますね。おじはこの句で今、思い出したことがあります。おじが洗礼を受けた日、授けてくださった牧師が、「兄弟を見ているとナタナエルを覚えます」と週報に書いてくださいました。忘れもしない、1981年のことです。ナタナエルはイエスにお会いする前にイエスに知られていました。「この人こそまことのイスラエル人だ」と紹介してくださるイエスに「主よ、わたしをご存知なのですか」と問うナタナエル。あなたがイチジクの下にいた時にわたしはそれを見たのだ」といわれるイエスに、彼はわが主よ、わが神よ、とひれふしますが、さらに大いなることをあなたは見るであろう、とイエスは彼に言われました。そのときのことを思い出しながら、ボクがイエスに出会う、イエスを求める旅は、実は主がわたしを知ろうとされ、そして求めておられることを確認するものだったと気づいたのです。そのことを思い出しました。またおじサイトにもお越しくださいますように。では、また。 Re: (無題) 余白 「わたしは〜門のそとにたち〜とびらを〜たたいている〜♪。。。」 大好きなカトリック聖歌を思い出しましたー。 ---------------------------------------------------- 福音短歌 その6 島 一木 天の父は 悪人の上にも 善人の上にも 太陽を上らせる (マタイ5:45) 天の父が 完全であるように あなたたちも 完全な 者になりなさい (マタイ5:48) 施すときは 右の手の することを 左の手に 知らせてはならない (マタイ6:3) 祈るとき 奥の部屋に入って扉を閉め 隠れてまします父に祈れ (マタイ6:6) 人のあやまちをゆるすなら 天の父も あなたたちを ゆるしてくださる (マタイ6:14) <余白の風 第84号感想> 深い根を 誰にも見せぬ たんぽぽや いわたけゆうき 花は氷山の一角ということですねえ。クリスチャンとしての今があることに、ホッとする私です。 蝶々が 座るおイスは タンポポよ 緑の風 ノアの洪水の後、箱舟から放たれた鳩がオリーブの葉をくわえて戻ってきたのですが、その鳩がピースの空き缶に描かれてるって、ご存じでした? 私、空もてぶらだ 比田井白雲子 芽ぶけばこころ安し 〃 「私情を捨て」るのは本当に難しいことだと、しみじみ思います。 地をつたって響きくる 温もり食べてあるいのち 奈菜 奈菜さん、すごい。長足の進歩ですね!私、それが感じられるようになるまで十年かかりました。私のためにも祈ってくださいね。 寒鯉の欠伸に出づる銀貨かな 余白 人日やわが半生を悔やみ居て 〃 ミサ毎に蕾やわらぐ桜かな 〃 逃げ水を追うて迷いし羊かな 〃 第一句と第四句、一歩先を越されたなあと思います。消化吸収の第二段階に突入ですね! <緑の風さんへ> ご質問ありがとうございます。ご返事遅くなりました。まず最初の質問ですが、オリジナリティ(独自性)と自我とは全く別のものだと思います。聖書をそのまま手渡すならともかく、引用にしろ創作活動が伴なう以上、オリジナリティも自我も完全に排除することは不可能です。福音書のどの箇所をどういう基準で選ぶかという点に、「作者の目」が働くと言えば答えになるでしょうか? 次に、手法に関するご質問ですね。そうですねえ、何とお答えしてよいか。実は、私も短歌に関してはシロウトなんです。福音短歌なんて仰々しい題をつけて、大きな顔して発表してますけれど、果たしてこれらの作品を短歌と呼べるのかどうか・・・・ははっ。ただ、キリスト教は日本ではまだこれからの思想なので、誰かが何かやってもないと始まらないわけです。失敗を恐れずに試みるということですね。従って、効果については私も全くわかりません。強いて言えば、直感で手法を選んでいます。緑の風さんの御活躍を期待しております。 ---------------------------------------------------- 「紫」2003年5月号より 余白 寒戻る祈りの果実疑わず 人生にテキストありや四谷駅 不安もて祈りに誘う神の春 春一番吹きて自画像おそるべし 暮れてなお優柔不断春の海 わが身にも御業成るべし春の風 いかにても祈り聞かるる春霞 <テーマパーク 人間> これもまた人生とみて春が来る あれこれと諦め平安花八つ手 狂女解く新聞パズル春近し 半生を二(ふた)籠に下げ冬の窓 祈るごと人は紅葉となり行きぬ わが咎なりわが罪なりと木の葉散る 春のドアすり抜け我を抱く御風(みかぜ) ---------------------------------------------------- l
イマイキ共同日記by管理者推薦作家 2003/05/15(木) まいまい 司祭様になるのって・・・・ 初めて,今日,井上洋治氏の『余白の旅』を読んでいます. 2003/05/05(月) 如月 車椅子の購入を検討 連日の季節外れの猛暑。家内にも無理は決してしないようにと促しておりましたが、私の出勤後、こっそり教会に出かけてしまったようで(家内にとって教会に行くことは生活の中でも最も楽しみなこと、大切なことなのです。)結局暑さに耐え切れず「熱射病」になってしまい路上でダウン(私が勤務中の出来事でしたので不覚)。自力の歩行が困難なため都営地下鉄の職員さんの温情に甘えさせていただき自宅の玄関先まで車椅子で搬送させていただきました。昨夜は嘔吐がなかなか止まらず、異変を感じるたびに嘔吐用のバケツを持って枕元に駆けつけるという気が気でない状態が続きました。(一応、医師の判断に従い、水分を補給(生理食塩水)すること、冷却すること、服薬して休息を充分に与えることで今朝の段階では症状は軽快しております。)私も職業柄、一応このような場合の介護のノウハウは心得ているものの、実際にベッドからの移動動座と異なり、臥床状態(和床=床にねぞべった状態)から患者さんを起立そして歩行誘導する動作をお手伝いするのは大変であります。これを機会にいざというときのために家内用の車椅子の購入について検討し始めております。 2003/04/28(月) SPAT 拝命記念日(自サイトから転載) 1999年の四旬節は暗かった。 l
ホームページ掲示板imaikibbsからの抜粋です ▼余白 ▼angela ▼小さき花 ▼如月 ▼なん ▼おじ ▼如月 ▼あきこ ▼訪問者 ▼まいまい ▼余白 ■後記にかえて余白の句日記(毎日一句) 4/30(水)教材也プラトンまで来て四月尽 5/1(木)五十六点二キロとなりぬ春の霊 2(金)連休の狭間に覗くソクラテス 19(月)学生や居眠りサボリも安居かな 「余白の風」は俳句を中心として、日本人の心情でとらえたキリスト信仰を模索するための機関誌です。毎月発行しています。どなたでもご自由に投稿ください。 |
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